鍵丸

鍵丸

刃渡り二尺、浅く反る。直刃。拵は極めて簡素。
怪異への有効な攻撃手段として認定。


さて、僕の話でもしようかと思う。
刀というものは、一般的に人殺しの道具であるし、血肉を断つことが好きか嫌いかでいうならば、きっと好きだ。
例外はほとんど無いんじゃないかと勝手に思ってる。

ただ、人に従う方が好きなのが刀としては一般的なんじゃないかな?
だって道具って人の為に奉仕するのが役目でしょう。
人に使われて、人がどういう風な役割を与えるのか、それに従うのが本分。

僕はどうかって?
勿論そっちの方が性に合ってるよ。
だからとざすの頼みを聞いたのだって、こういう風に好き放題に動きたかったからじゃない。
とざすが嫌な思いをしたり、苦しいと思ったり、それから少しでも逃げられるのなら手を貸そうと思っただけだ。

退魔の刀使いとして凡庸な彼女が、上手く活躍できるようにこれまでも何度も手を貸して来た。
それのちょっとした延長線だった。
刀がどこに向かえば上手く斬れるのかは決まっている。
僕は刀だからそれくらいはいくらでもわかる。
手をどう動かすのか、足をどう動かすのか、身体をどう動かすのか、
教えてやってその通りに動いてもらうこと、それと大きな違いは無かったはず。

上手くやってねと言われたから、勉強もやれる範囲で頑張ったし。
最初は白い目で見られることだってあったけど、友達だって何人も作った。
会話を学ぶために至る所で色んな人の会話を聞いて回った。
数学は得意だった、単に公式に当てはめたり、読んだ通りにやれば答えが出るから。
英語だけはどうしても苦手で、なかなかうまくならなかった。
だから点数は下がってしまったけど、許してほしいな。

最近どうにも、何か違えている心地がある。
それで、今の状態がずっと続けば良いんじゃないかって、それでも良いんじゃないかって。


鍵というものは、扉を開く性質と扉を閉じる性質の二つを持つ。
持ち主の道を切り開く。
敵対する相手の歩みを切り閉ざす。
鍵丸は主君に忠実な刀だった。


刀は血を求める。
その性質も嘘偽りなく。

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