公園での一幕
ナイゼル : お(見知った顔を見つけて手を上げた)
オルキアス : (歩いて来た少年が犬に吸い寄せられ、撫でている……。)(が、声に気付いて振り返る。)
オルキアス : げ。
ナイゼル : げ、とはなんだげとは!
オルキアス : フンッ!自分の胸に手を当てて考えてみたらどうだ?(等と言いながらも近寄って来る。)
ナイゼル : う〜ん特に何もしてないな、取材熱心な記者でしかないだろ私は
オルキアス : 所々が不埒なんだ貴様はッ
ナイゼル : あんだよ〜今日も見回りか?それとも非番か?
オルキアス : 図書館の帰りにこっちの区画を眺めてただけだ。そういう貴様はこんな場所で何を……?
ナイゼル : 休んでるだけだが?取材以外だと基本暇してんだよ。特に住んでるわけでも無いし、魔物退治に行くかみたいなことも無いしな
オルキアス : わざわざ学術区画で……?まあ此処の辺りは広々していて整っているから貴様のような者が憧れるのも無理は無いがなッ
ナイゼル : 学生とか通ってくから結構面白いぜ、お前も一寸前までは学生だったんだっけ?
オルキアス : 僕は確かに此処の卒業生だが…… 変な目で学生を見ているんじゃあ無いだろうなッ ナイゼルッ!
ナイゼル : いやガキ過ぎてあんまり……私を何だと思ってるんだッ!ケダモノか?えぇ?!
オルキアス : その点はそこそこに軽薄だろう貴様はッ!
ナイゼル : まあまあね。まあまあ。逆に考えろよ。年頃の男が女に興味無い方が怖いだろ。
オルキアス : 其処は〜…… 人それぞれだろ。
ナイゼル : へえ。で、お前はどっちだよ。
オルキアス : フンッ!そのような事にうつつを抜かしている暇があるならば勉学と騎士の道、レガリアの為に尽力した方が善い選択だろうッ
オルキアス : まあ、子孫を増やすという点においては確かにそれも貢献となるが……… 僕はまだ適正年齢でも無い。
ナイゼル : うかうかしてると他の奴に取られんぞ
オルキアス : はぁ?
ナイゼル : 先に声かけた方がって場合はあるだろ
オルキアス : 声を掛けるって……誰の話をしてるんだ?(微かに首を傾げる。編んだ髪が揺れた。)
ナイゼル : 架空の女
オルキアス : はあ〜〜???
ナイゼル : やらないか?そういう話……
ナイゼル : マジで?
オルキアス : 最終的な結婚相手は家柄が良く健康体でそこそこに見目が整っていて僕の家の事業をきちんと理解出来る相手とは思っているけど。
ナイゼル : す、すげえの出て来たな……貴族とかそういうやつ?
オルキアス : 僕自身が貴族であるのだから当然だろう!!より良い家として行くには必要なことだッ
ナイゼル : どうりで偉そ……ごほん、真面目なんだなお前
オルキアス : 誤魔化せてないぞッ!! 偉そうじゃあなくて偉いんだ僕はッ!!そして勉学に励むことも騎士への道の一つッ!!
ナイゼル : わーったわーったえらいえらい!!
オルキアス : フンッ 僕の寛大さに感謝することだなッ!!
ナイゼル : いっつも大体それになるな……ま〜いいや。部隊の連中とは上手くやってるか?フォーマルハウトだっけ
オルキアス : 当然だろ?我らが同胞、そしてイルヘリオ様と共に在る者達なのだからッ
オルキアス : “ティーパーティー”の方々は毎回つっかかってくるけど……。(小声。)
ナイゼル : ウルスラさんとこ?
オルキアス : う。……ごほん! 我々フォーマルハウトとティーパーティーの方々はライバル的存在ッ!同胞で在りながらも競い合い、お……己を高め合っているのだ!(という感じにしておいた。確かにそういった面もあるのだろう。)
オルキアス : 勿論ッッッ 最後に高みに上り詰めるのはイルヘリオ様……我々フォーマルハウトだがなッッ!!!
ナイゼル : はは〜んで最近は向こうのが調子乗ってるんでつっかかられがち?ってトコ?
オルキアス : な、フォーマルハウトだって成果を上げているッ!!竜血騎士様にも褒められたんだぞッ!!
ナイゼル : あのヤバそうな騎士!?
オルキアス : なんだその言い方はッ!!やめろッ!!不敬だぞッ!!
ナイゼル : い、いやだってよ
ナイゼル : (小声)どう考えても普通の騎士連中よりデカいだろ……!何か色々(ステータス的な意味で)と!
オルキアス : なん…… 当然だろう、あの方々は教皇猊下直属の騎士だ。僕達とは格が違うのは当然。
オルキアス : だから色々(ステータス的な意味で)とお強いのだッ
ナイゼル : 人の鍛え方としては人智越えてるっつーか……まあ、そういうもんなのか……?
ナイゼル : 流石にあの辺に模擬戦とか頼んだら今の私じゃ普通に死にそうだとは
オルキアス : 絶ッッッッ対にやるんじゃあないぞッ!?!?
ナイゼル : やらねえよッ!!!命が惜しいっての!
オルキアス : 不敬過ぎて模擬戦どころか多分皆様の手で一瞬で焼かれるだろうな。
オルキアス : 森に出る前に。
ナイゼル : 流石にそうなったら困る、私にはまだ旅の目的ってやつがあるんだからな
オルキアス : フン。では自分の立場を弁え、それ相応の言動を心掛ける事だッ
オルキアス : 教えてやっている僕に感謝するがいいッ
ナイゼル : はいはいわかりましたよオルキアス殿〜
オルキアス : なんだその棒読みは……
オルキアス : まあいい。そうだ、貴様の記事を読んだぞ。
ナイゼル : これが棒読みに聞こえるのか?敬ってやっただろッ
ナイゼル : お、良いな。どうだった
オルキアス : 枠がもうちょっと豪華なのが良かった。
ナイゼル : ……
ナイゼル : バニラさんに頼めよッ!私も頑張って掛け合ったんだが!?というか内容は!内容はどうだった!
オルキアス : 内容は…………………… まあ及第点としてやってもいい。(凄い偉そうだった。腕を組んでそっぽを向く。)
ナイゼル : フン、めちゃくちゃ面白かった今後も留まって書いて欲しいくらいだナイゼルさんどっか行くの寂しいな〜でも引き留めたりは出来ないもんな。達者で過ごしてくれよって?
ナイゼル : (言ってない)
オルキアス : そんなこと一言も言って無いだろッ!!!!
ナイゼル : 心の声を代弁してやったまでだッ!
オルキアス : 思ってないッ!!!!
ナイゼル : フン、居なくなってからそう思うようになる
オルキアス : ……………………
オルキアス : ……このレガリアで居なくなるという事は即ち生命の終わりということだ。たとえ別々の層に別たれたとしても、区切られているとはいえ一目見る事はできる。 ……そうやってその言葉を使うのはやはり異邦人だな。
ナイゼル : そうだな。まあ、死ぬ気は無いが……
ナイゼル : お前もその仕事してるとその内、身内の死に目に当たったりすることがあると思う。言いたいことは早めに言っておくべきだし、死ぬ時まで待ってくれることなんてない
オルキアス : (視線を上げる。)
オルキアス : ……フン!そんなことは解っているし、 ……既に同胞の死は見た。
ナイゼル : フ、そうか。なら間違わずに続けろよ少年
オルキアス : 当然だッ!!僕は騎士を目指す者ッ!!このレガリアの為に生き、そうしてレガリアの為に、
オルキアス : ………、 ………… (言葉が止まる。目の前の男を見上げているはずの翠の瞳は何処か違うところを見ていた。)
ナイゼル : (貴方の頭に手をやって髪を乱した)ま、元気よくやってろ!私も元気にやるからな!ハハハ!!
オルキアス : ──うわッ!! お、おいッ!やめろッ!!(ぐしゃぐしゃにされた髪はそのままに、手を払った。)
オルキアス : 言われなくてもッ お前こそそんな事を言いながら無様に転がるんじゃあないぞッ!!
オルキアス : (するりと出た言葉は、“貴様”ではなく“お前”だった。少年が同世代に使うような、砕けた表し方。)
ナイゼル : フフ、当然ッ!私がどれだけの苦境を乗り越えてきたと思ってる、雪山も砂漠も越えて来たッ!
オルキアス : (乱れた髪を手で整えつつ) フンッ!!精々励むことだなッ!!
オルキアス : (踵を返し、背を向ける。)
ナイゼル : (その姿に手を振る)
オルキアス : (風の音に紛れて、言葉が落とされる。)
オルキアス : ………僕は此処で生き、此処で終わるんだ。……レガリアの為、祭壇と炉の為、
オルキアス : ────の為に。
オルキアス : (そうしてその場を立ち去って行った。)