聞きたい話

ロザーリオ : 机で寝てしまうというのはあまり関心しませんが、お久しぶりです。なんてね
カルロ : …………んん… ……
カルロ : はっ……嘘、寝てた!?
ロザーリオ : はい。およそ一晩近く。私の時間の感覚が合っていればですが。お疲れでした?(そう言って笑った)
カルロ : お、おおう、いやお久しぶりって程でも、だけど。うん……、だいぶ大きい仕事を終えたもんだから、疲れてたかも。
ロザーリオ : 久しぶりと思う程、会いたかったのだと解釈してください
カルロ : あはは……ごめんな。待つ時間はずっと長いもの。
ロザーリオ : それで、その大きな仕事の話は勿論秘密にはしませんよね。
カルロ : (困ったように笑った。あなたが会いたいと思ってくれること自体は嬉しいが、寂しがらせたことはかすかな罪悪感がある)
カルロ : ああ、もしかしたらダミアンから聞いてるかもしれないけど。
ロザーリオ : いえ、聞く前に貴方から聞くのでと伝えましたので……まだ聞いてません。
カルロ : わざわざそんなこと言ったのか?ははっ、それじゃきちんと俺の口から話さなくっちゃな。
ロザーリオ : む……先に知ってますと言うよりは、その方が喜ぶかなと……(少し恥ずかしくなってきた、視線をやや逸らした)
カルロ : (珍しいあなたの表情に、いたずらっぽくにっと笑ってみせた)
カルロ : ダミアン、それからエシェル、クグと仕事してきたんだ。
カルロ : リーン十区の様々なギルドから依頼を受けることになって、それで…
ロザーリオ : (十区のこと自体はそれなりに知っている程度だ、貴方の語る友人の話も知っている顔と知らない顔が混ざる、大人しく聞き手に回ることとした)
カルロ : 最初は黄金組合からの取り留めもない借金の取り立て手伝い依頼だったと思うんだけど。
カルロ : 色々…
カルロ : 本当にいろいろあった末に、リーン地下遺構にあった『魂の器』なる術式を十区のギルドと総出で倒したってわけ。
ロザーリオ : (様々な話を聞きつつ、最期にはほうと一言感嘆した)
ロザーリオ : 魂の器……ですか。
カルロ : そ、ダミアンの分野…死霊術にこそ近いか。魂の強制的な融合を繰り返す術式…って話だった。
ロザーリオ : そんなものがこの街にあったというだけで驚くべきことですが……実際にやったというんですから数奇なこともあるものですね
カルロ : 全てを一つにする……今思い出しても悍ましいものだったが。そうだな、現実に起こったんだから驚いた。
カルロ : かく言う俺たちもこうして話す今は奇跡的なことなのかもしれない…。
ロザーリオ : そうかもしれません、今この場に居るそれ自体が数多の積み重ねですからね
カルロ : それで……『魂の器』と対峙して思い出したことがあって。
ロザーリオ : もしも、それが嫌なことならば話さずとも構いませんよ。
カルロ : (自分の首に巻かれたリボンをそっと指先で弄った)
カルロ : ううん。嫌だったわけじゃない。
カルロ : 俺が神霊だとかって話、以前話題に上がったことがあったよな。
ロザーリオ : ええ、あの時はどうにも私が別件で出て行ってしまったのもありますが、きちんとは聞けていませんでしたね
カルロ : 俺自身ずっと朧気だったが、どうして"死に損なったのか"、それは故郷の一帯で祀られていた水神の使いになったから、だと思う。
カルロ : 村じゃ最後の子だったからか、気に入ったのか、憐れんだのか、確固たることは分からないけど。
ロザーリオ : ……
ロザーリオ : なら、何時かは何処かに行ってしまいますか
カルロ : ……え?どうして。
ロザーリオ : 私よりそちらと居るのが自然だと、そう貴方が考える時があったら。貴方はそちらに行って二度とは帰って来ないだろうと、そう思ったから
カルロ : (ふっと微笑んで、机越しに、両手であなたの片手を取った。謂れのない金の指輪を撫でる)
ロザーリオ : ……ええと、
カルロ : もう帰らない。
ロザーリオ : ……良いんですか
カルロ : 蝶の羽ばたきを止めたのはあんただ。俺は居場所をもらった。
カルロ : 今更躊躇う必要なんてないだろう?
ロザーリオ : ……時折、ですが。
ロザーリオ : 良かったのかなと、そう思う時があります。悩む必要も躊躇う理由もないはずなのに。
ロザーリオ : 恐らく、私が此処に居られる所以が不安を呼ぶからなのでしょうね(曖昧に微笑んで、それから手を握り返した)逃れようのない話ではあります、ただ選んで頂けるなら放しはしませんよ。
カルロ : ロザーリオ……。
カルロ : もっと自信もっていい。俺が保証する。間違いとか正解とか、誰が選んだかとかじゃなくて。
カルロ : あんたが自ら選び取ったんだと。
カルロ : 人差し指の指環はインデックスリング。まさしく標の意だ。
ロザーリオ : ……確かに自分で貴方の隣を選んだのだと、それは……確かです(完全には自信を持たないような物言い、引き下がる余地を残してしまう)
カルロ : この名も指環も、剣の使い方も…よすがも…すべて、あんたがくれたんだ。
ロザーリオ : 不意には消えられなくなったな。なんて
カルロ : ふふ。あんたが俺を思ってくれるのなら、自分のことも思ってくれ。たまにはね。
ロザーリオ : たまに、で良いなら。ですがどうしても馴れなくて
カルロ : そういう性分で、難しいって言うのも分からなくないけどな。んー…
ロザーリオ : 何か思いつきますか?対処だとか……改善方法だとか
カルロ : 俺の場合手が空いてるとモノ作ったり弄ったり本読んだり剣の修練したり散歩したり泳いだりだけど……なんか好きなことやってみるとか?
ロザーリオ : く……趣味を探せだとか、その話に繋がって来る……
カルロ : でもロザーリオもよく本読んでるな…俺よりずっと読んでるよな…
カルロ : あー自分で作ってみる、とか。日記付けてみるとか。
ロザーリオ : どちらかといえば内容よりは文字数を数えるなんかが近いので、読んでいるかと言われると然程……
カルロ : 文字を数えるって吸血鬼かなにか??
ロザーリオ : 大体の本はもう読み切ってしまっていますから……
カルロ : えーとえーと…何か書くのが難しいなら…ほらピアノだって弾けるし…
カルロ : 言っておいてあんまりいい記憶じゃなかったかも…ごめんな…
ロザーリオ : まあ、あまり良い思い出ではありませんね……リュカからも不評だった通り、あまり上手くは無いのです
カルロ : 巧拙は分からないが俺は好きだってことは添えておく。
カルロ : 何十年の問題ともなると難しいな……
ロザーリオ : む……ううん……そうですね、巧拙をミスしないかどうか、と取るなら精度は高いと思います。ええと、
ロザーリオ : ただ、好きだと思って頂けるのは素直に喜びたい……かな
カルロ : 素直に喜んでいいのに不器用なんだから(はにかんで微笑む。そんなところも可愛くて好きなのは内緒だ)
カルロ : うーんロザーリオの好きなものって何?俺?剣?人をからかうこと?
ロザーリオ : 何ですか最後のは……
カルロ : でも好きでしょ。
ロザーリオ : 剣は好きですし、貴方も好きです、からかうのが好きかと言われると……ええと
ロザーリオ : 好きではあるのかもしれませんが、知らない側面を見てみたい、があるのかもしれません。
カルロ : (あなたの手の指と自分の手の指を絡めてきゅっと軽く握った)
ロザーリオ : ……すみません、思っていたよりも私はこの手の自分の話が不得意らしい
カルロ : (口元が緩やかに弧を描く)ううん、随分考えるようになったんだなと嬉しくなった。すぐに答えは出ないとしてもだ。
ロザーリオ : 休みますか。少し、話疲れたかもしれません。
カルロ : そうしようか。慣れないことに思考を巡らせるのは大変だもの。
カルロ : (片手でもってあなたの手を自らの口元に寄せて、指先にそっと口づけた)
ロザーリオ : あ……こら。(その手を引き寄せ返して、やり返してやった)
カルロ : う、勝ち逃げしとこうと思ったのに捕まった。
カルロ : 負けず嫌いなんだから~
ロザーリオ : 勝ち逃げは少し許しがたいかな。またいずれ剣でも、結局貴方に勝てては居ませんから
カルロ : ふふ、次も負けない。まあ他のことではだいぶ……その……(寝台にいった視線が彷徨って)まあ、だけどさ。
ロザーリオ : フフ、寝直してみては?私は眠れませんから必ず勝てますよ。
カルロ : 今日は休むっ!机で寝たせいかちょっと背が痛いかも…(ぐ、と伸びをして) ぐう……っ卑怯だろそれは。
ロザーリオ : 気にせず話の種に出来る位の気にはなったのかも。という所です。おやすみ
カルロ : (そのまま寝台には向かわずやってきて…おやすみの一言を聞いた直後に抱きつく)
ロザーリオ : む……
カルロ : ちょっとくらいは良いでしょ。
ロザーリオ : まあ、構いませんが……
カルロ : (頬寄せて、硬く冷たい身体に身を預けていたが、ややあって首元に、痕をつけた。あなたほど上手くはないだろうが)
カルロ : ……じゃ、おやすみ!(逃げようとする)
ロザーリオ : あっ、ちょっと……!こら……!
カルロ : (べ、と舌を見せた。クソガキだ…!)
カルロ : (ぽすん)(ベッドに逃げて丸くなった)
ロザーリオ : 全く……からかってくるじゃないですか。良いですけど。
カルロ : ……(布団からちらっと様子だけ伺っている…)
カルロ : (あなたがこちらに来るとビクッと跳ねた)
ロザーリオ : (枕元まで寄って、それから本当に軽く首を絞めた)
カルロ : ……!!
カルロ : (抵抗はしなかった。ありありと刻まれた傷に触れられて、僅かに身を震わせて息を吞む)
ロザーリオ : (軽く首の傷をなぞったあと、顔を寄せて)悪い子でしたね(なんて笑って口元に口付けた。そして同じくやり逃げ。椅子に戻っていく)
カルロ : ……っ……う……(どくどくと脈打つ音がうるさい。やっぱり当分勝てないのかもしれないと思った。きゅっと身を縮めて丸くなる。)
カルロ : (しばらく眠れそうにないが目は閉じた……)
ロザーリオ : (目を閉じた気配を感じればそのまま本に視線を落とした)