高校1年、閂とざすの話2

人間の価値だとかそういうものは自分で決める物かと言われるとあまり納得がいかない。
どんな犯罪者でもどんな人殺しでも自分には価値があると思えばオッケーなんて虫が良いじゃない。
誰に価値があるのか、何に価値があるのか、そういうのって他人が決めるし、外から見て決めるものじゃない?

成績は平均点、身長は高くも低くも無く、無口で無愛想。
特筆して仲良しな相手は居ないし、虐められたりもしていない。

閂とざすはそういう女だ。
学生時代のおよそ大抵の人間関係というものは、4月の間に決まると思っている。
誰と付き合うのが自分にとって良いことなのか、どのグループに属するのが良いのか。
そういうのって大体一週間も居ればわかるよね。

私は極力印象に残らない位置につくことにした。
計画の事もあったから。

家賃は15000円、築82年、学園までの距離はルートによっては短い。
割り当てられた204号室の部屋の中には大した物も置いていない。
一人で上手くやっていく、そのつもりだった。

物を置くのはやめた。
実際一人で上手くやれていたかと言われると、微妙なところだ。
朝、遅刻しそうになって何度か5分の道を通った。

身辺整理といえば聞こえの良いことだけど、好き放題に生きた。

勉強について行くのは大変だから授業の最中に別の事を考えた。
当然成績は落ちた。数学で赤点なんて取ったの初めて。
自分の此処まで積み上げたものを壊すのはどことなく気持ちの良い物では無かったけど。

人付き合いの為に見栄を張るのをやめた。
当然仲良しの相手が出来ることはなかった。
中学まではどうにか出来てたことが出来なくなるのはどうにもあんまりいい気持ちでは無かったけど。

居眠りが増えた。
髪留めを落とした。
靴を壊した。

それで春休みにようやっと、自分の価値だとかそういうのに見切りをつけ切ったと思う。
死にたいだとか消えたいだとか言っても、本当に自分はだめだなと納得するまでには1年以上かかった。
自分で決める自分の価値なんてばかばかしいよねと思ってる割にこうなんだからバカだ。

鍵丸は上手くやってる?

なんてね。
知ってるよ、そんなこと。