タイトル

Character
グレイ
壮年の魔術師。リーンにも大分馴れた。

Log


その時、風が強く吹いた。

停滞していた空気が動く。
月と、赤い匂いが路地からあふれ出す。
グレイ : ……

月が、照らしだす。
暗き路地裏、逃げ込める場所のなかった浮浪者────だったもの、
そして、刃を。

あなたの膚のその下を夢見て、きっと無意識にだろう。
女は、静かに笑っている。

人体の発酵したにおい。
蠅。
そして血。


憲兵:
──立ち話を、しかもこんなところでするのもなんだがな。
グレイ : そう思うならさっさと話せよ。

この場には似つかわしくないほどに落ち着き払った声だ。
憲兵は冒険者を、妙に平べったいような視線で観察した。
憲兵:
冒険者への依頼についての一切は俺が預かってる。
何でも聞いてくれて構わない。
グレイ : ああ。わかったよ。
憲兵:
 あなたへの依頼は、この惨殺事件の解決だ。
 疑問点はあるか?
 型通りの答えしか用意はないが。
グレイ : 事件について聞かせてくれよ
憲兵:
 最初の犠牲者は8日前に出た。
 状況からして、同一犯による連続殺人だ。
グレイ : ハ、随分手をこまねいていた事だな……
憲兵:
 ……事件、とは言うが。
 犯人は人間じゃないらしいな……。
憲兵:
 あなたへの依頼は、この惨殺事件の解決だ。
 疑問点はあるか?
 型通りの答えしか用意はないが。
憲兵:
 最初の犠牲者は教会の関係者でね。
 さっそく駆け付けた神父様が断言したそうだ。
グレイ : 教会ね。
憲兵:
 「吸血鬼の仕業だ」と。
憲兵:
 ……そう身構えないでほしい。
 いわく、犯人は「成りたて」である可能性が高いらしい。
 成り立ては、スマートに食事ができずに「ああする」んだと。
グレイ : そういうものかよ。わかったわかった。
憲兵:
 人が成ることもある怪物だ。そして成り立ては、まだ弱い。
 少なくとも、まだ冒険者一人で対処できる脅威だと
 俺たちは踏んでいる。
憲兵:
 そのためにリーン最高の冒険者を呼んだんだ。
 ……しくじるなよ?
憲兵:
 あなたへの依頼は、この惨殺事件の解決だ。
 疑問点はあるか?
 型通りの答えしか用意はないが。
グレイ : リーン最高ねえ……御大層な呼び方じゃあないか。
憲兵:
 分からない。
 だが他の三人の犠牲者もこの近くで出ている。
 リーン内、それもこのあたりであるのは確実だろう。
憲兵:
 作戦もある。単純で古典的な方法だが。
 今夜、家々に注意を促し、深夜の外出を禁じる。
 あなたにだけ、外を出歩いてもらいたい。
憲兵:
 むろん囮兼、作戦の要だ。
 おびき寄せ、その場で撃破してほしい。
憲兵:
 ……すまないが、君一人での行動になるだろう。
 怪しまれてはいけない。
 相手はまだ弱く、警戒心が強いと思われるのでね。
憲兵:
 あなたへの依頼は、この惨殺事件の解決だ。
 疑問点はあるか?
 型通りの答えしか用意はないが。
憲兵:
 そうか。
 ………さて、受けてもらえるだろうか。
グレイ : もういいよ。受けよう。
憲兵:
 依頼は君一人で遂行することになる。
 撃破手段が必要なことは留意してくれ。
 ……教師に説教してるのか俺は?
憲兵:
 ああ。助かる。
 では今夜、よろしく頼む、冒険者。
憲兵:
 武運を祈るよ。
グレイ : ああ。じゃあな。

現場の状況をしっかり確認してから依頼に向かうべきだ。
敵のヒントがあるかもしれない。

真新しい、昨夜の遺体だ。
出血が激しい……。
観察する
目標値:6 <= 3d+感覚補正+パーセプション
達成値:9([1,4,1]+3)
判定に成功しました
グレイ : 造作も無い

とかく損傷が激しく、傷がない皮膚のほうが少ない。
動脈を狙われてか、派手に血が飛び散っていた。
違和感
目標値:6 <= 3d+感覚補正+メモライズ
達成値:13([2,3,5]+3)
判定に成功しました
グレイ : 造作も無い

───────覚えているのならば。

思い出す。似た部屋、似た死体。
ささいな、けれど決定的な違いがある。

食い散らしてなどない。
これは成りたての吸血鬼の仕業ではない。

それは、整然と捌かれた肉だった。
馴染みある、市街の肉屋の光景に似てすらいる……。
憲兵:
……おいおい、大丈夫か?
ちょっと顔色が悪くねえか?
グレイ : ……
グレイ : (「前に、どこかで?いや……どうだ……?」)
憲兵:
そりゃそうだわな。ちょっと外で休むか?
グレイ : (不機嫌そうに)顔色は元からだよ。それよりも、
憲兵:
うん?
グレイ : これは本当に吸血鬼の仕業か?

男は妙に平べったいような目で冒険者を見る。


夕暮れの食堂は静かすぎて耳鳴りがするようだった。
カウンターでおやじが皿をふく音すらやたらこそこそとしていた。
グレイ : ……
グレイ : っ、居眠りでもしていたか……?騒ぎすぎただろうか……

蝋燭さえけちをして、今は夕日がひそやかにテーブルを照らす。
手元すら、じきに見えなくなるだろう。
おやじ:
 あんた、今日は外出禁止令が出てるぞ。
 というか何か頼まんのか。それとも帰るか、どっちかにしな。
グレイ : あ”……?

依頼の始まる夜まで時間を潰したい。
冒険者は……
グレイ : そんじゃ、何も頼まないのは悪いな……スープを一つ良いか。

冒険者は腹ごしらえの必要を感じなかったのかもしれないし、
あるいは食べ物が喉を通らなかったのかもしれない。

おやじは嫌な顔一つせずに、一杯のスープを出してくれる。
具の少ない、シンプルな、けどあたかかく滋味あふれるスープだった。
おやじ: 
 しかしなあ、あんたもなんでこんなときにこんなところに居るんだ。
 外出禁止令だぞ? 吸血鬼が出るって話だ。
グレイ : (スープを啜りつつ)

おやじは強く言いつつも、心から心配そうにしていた。
冒険者は……
グレイ : ハ、心配するなよ。
おやじ:
 おん? ……だんまりか。
 ま、かまわねえさ。でも無事に家に帰ってくれよ。
おやじ:
 ……ああ、もう日が落ちるぞ。

気付けば空は暗かった。
雲にちらつく残光も、じき夜に呑まれて消えるのだろう。
グレイ : ……

行かなくては。夜が来るのだ。
冒険者は席を立つ。
グレイ : リンギンベル、行くぞ。
おやじ:
 ……おいおい、今出るのか?
 別に朝まで泊めてやってもいいんだぞ。椅子ぐらいしか貸せないが……。
グレイ : 椅子じゃ眠れないんでね。
おやじ:
 なんであれ、命あっての物種だ。

冒険者はドアに手をかける。
グレイ : ……
グレイ : なあ。
グレイ : …………
グレイ : 何でもねえや。

…………行かなくては。

女は月を背に歩み寄る。
風が吹けども僧服は揺れない。
それはすでに血を吸ってじっとりと重い。

ヴェールの影、赤い唇は笑っている。
そこに、牙は、ない。
グレイ : ッ……!!
シスター:
 ……今日を本当に楽しみにしていました。
 すっごく強い冒険者さんが来てくれるって。

吸血鬼などではない。
これは血に狂った哀れな怪物などではない。
グレイ : 何だ、お前は。
シスター:
 みんな、無抵抗で……つまらなかった。
 今日はちょっと違う気分、味わえるんですよね!

得物を抜け。引導を渡せ。
これは正しく怪物だ。
グレイ : チッ……!面倒押し付けやがる……!

血の味を知り酔い痴れた女は、
吸血鬼よりおぞましいものへと成り果てた。
シスター:
 大丈夫です。お強い方。
 きっとあなたが勝ってあたしは死ぬの。
 

それは、牙でも爪でもない。
ただの包丁が向けられる。
シスター:
 だけど!
 それまでに……あたしは何度あなたを斬れるかしら!

討滅せよ。
Round 1
シスターは[殺人適正]になった
シスター:
 さあ……やりましょう。
シスター : 決死の一撃!
全力の一撃が放たれる!([6,6,6,6,5,4]+4)
シスターのクリティカル!
    グレイに12のダメージ  ([6,6])
グレイは移動した。
グレイはWillを使用した!
    グレイは[8,7]へ移動した。
グレイ : 『カーテルの琥珀』!
グレイは杖を掲げた  達成値:19 ([4,2,5]+8)
    シスターは[烈風]になった
シスターに10のダメージ  (([6]+16))/2
Round 2
グレイ : ぐっ……!(包丁の一撃を受け後退する)
シスターは移動した。
    シスターは[7,7]へ移動した。
グレイ : リンギンベル!仕事だぞ……! 『レルアバドの赫』!
グレイは杖を地に突き立てた  達成値:19 ([4,4,3]+8)
    シスターは防御した。
        ダメージを1軽減!  ([]+1)/2
    シスターに31のダメージ  ([6,4,6,1]+16)
        シスターは[重傷]になった
シスターの攻撃はAPが足りず失敗した。
グレイは移動した。
    グレイは[8,9]へ移動した。
シスターに8のダメージ  (([1]+16))/2
    シスターは[昏睡]になった
Round 3
憲兵:
 ああ、ここにいたのか。
グレイ : ハ……、そうだよ

気安いような口調で、ぎこちなくあの憲兵が隣に座った。
憲兵:
 何って、報酬を届けにな。
 まだ受け取っていなかったろ。
憲兵:
 …………質問だ。
憲兵:
 あれは吸血鬼だった。
 そうだな?
グレイ : ……
グレイ : フン、そういうことにしといてやるよ
憲兵:
 ……そうだ。
 あなたは賢い。

憲兵は冒険者に金貨袋を握らせる。
それはいつもより、少しずっしりと重たかった。
憲兵:
 ……あれは吸血鬼だったんだ。
 人間じゃない、得体の知れない怪物だったんだよ。
25ルド手に入れた。
憲兵:
 そしてそいつは再殺を果たされた。
憲兵:
 だから……この話はおしまいだ、冒険者。

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月下の簒奪
Master/acht8811様