「4日前の事件、顛末」

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　血のにおいが充満する狭い部屋だ。
　昨日の雨のしとりが腥さを固定している。

窓の外には、変わらず黒雲が沈殿する。
凄惨な現場にふさわしく部屋を暗くしていた。
グレイ : (外套が浸らぬようにと布を引き上げた)
憲兵：
　……ああ、冒険者か。
　早く来て、こいつを見てくれ……。
グレイ : ああ。わかった。

大柄な男の低い声が、すこし、震えている。
冒険者：
　俺は依頼人じゃねえよ。
　そっちのあんちゃんに話を聞いてくれ。
グレイ : そりゃあすまないね。

男は蒼白な表情であなたを見た。
いくら危険に対処する者であれども、
この凄惨な暴力による死を前に動揺を隠せないらしかった。
憲兵：
　見たとおりだ。
　……これで二人目になる。
グレイ : 早いな。最初のが出てからそれ程経ってもいなかったと思っていたが……

この街のどこかに、似たような部屋がもう一つあるらしかった。
じっとりとした部屋がもう一つ。
換気しないはずがないが、空気はよどんでいた。
憲兵：
　今回の依頼は、事件の調査ではない。
　調べはほとんどついているのでな。何せこの派手な現場だ。
グレイ : それもそうか。
憲兵：
　ゆえに、事件の「解決」を依頼した。
　犯人はわかっている。決着をつけてくれ。
憲兵：
　…………。
憲兵：
　最初の犠牲者は4日前に出た。
　状況からして、同一犯による連続殺人だ。
グレイ : ああ。聞いているよ。此方の地方に来たのがそのあたりだったのでね。噂になっていたとも。
憲兵：
　……事件、とは言うが。
　犯人は人間じゃないらしいな……。
グレイ : (現場を見渡し)そのようだ。
憲兵：
　…………。
憲兵：
　最初の犠牲者は教会の関係者でね。
　さっそく駆け付けた神父様が断言したそうだ。
憲兵：
　「吸血鬼の仕業だ」と。
グレイ : ハ、教会に出るような者はそうそう居ないだろうよ。
憲兵：
　……そう身構えないでほしい。
　いわく、犯人は「成りたて」である可能性が高いらしい。
　まだ力も弱いのだそうだ。
憲兵：
　人が成ることもある怪物だ。
　慣れない怪力で慣れない「食事」をすると、
　このように「汚く食べて」しまうことがあるそうだ。
憲兵：
　おぞましい話だが。
グレイ : (故郷の妖精の事を思い、暫し考え込んだ)ま、そういうものだろうな……
憲兵：
　…………。
憲兵：
　分からない。
　だがもう一人の犠牲者もこの近くで出ている。
　リーン内、それもこのあたりであるのは確実だろう。
憲兵：
　作戦もある。単純で古典的な方法だがね。
　今夜、家々に注意を促し、深夜の外出を禁じる。
　あなたにだけ、外を出歩いてもらいたい。
グレイ : 僕を餌にしようという訳か。クク……効率を思えばそれが一番か。
憲兵：
　むろん囮兼、作戦の要だ。
　おびき寄せ、その場で撃破してほしい。
憲兵：
　……すまないが、君一人での行動になるだろう。
　怪しまれてはいけない。
　相手はまだ弱く、警戒心が強いと思われるのでね。
グレイ : 十分に注意しよう。
憲兵：
　…………。
憲兵：
　ああ。
　では今夜、よろしく頼む、冒険者。
グレイ : ああ。上手くやろう。
憲兵：
　武運を祈るよ。

宿で夜を待ち、作戦に備えよう。

夜。
家々は扉を固く閉ざし、息をひそめ、冒険者と怪物を拒絶する。

風は変わらず沈黙し、黒雲が変わらぬ顔で見降ろしている。
怪物を隠すように、闇は深い。

冒険者はナイフをとり、
グレイに1のダメージ　　
グレイ

　っ……、

利き腕の反対、内側に線を引いた。
真新しい傷から真新しい血が、薄く薄く垂れ落ちる。
グレイ : そう騒ぐなよ、リンギンベル。(小瓶がカタカタと音を立てた)

これがきっと香って、獲物を求め彷徨う怪物を呼ぶ。
今夜の獲物を、呼ぶだろう。

…………！

角の暗がりに、人が佇んでいるようだ。
女、だろうか。
グレイ : ……

…………しかし。
一般人の外出は、今夜は禁じられたはずだ……。

冒険者は得物を抜き放った。
暗闇が、女が息を呑む、ヒッという音を強調した。
グレイ : (杖を構えた)

その短い悲鳴さえ終わらぬうちに、逃がすまいと肉薄する───

その時、風が強く吹いた。
グレイ : (一際大きな風がフードを揺らす)

停滞していた空気が動く。
月と、赤い匂いが路地からあふれ出す。

月が、照らしだす。
暗き路地裏、逃げ込める場所のなかった浮浪者────だったもの、
そして、女の持つ牙とあなたの刃を。

あなたの膚のその下を夢見て、きっと無意識にだろう。
女は、静かに笑っている。
Round 1
グレイ : ハ、正体を出したな。
レッサーヴァンパイアは移動した。
    レッサーヴァンパイアは[3,5]へ移動した。
グレイは移動した。
    グレイは[5,6]へ移動した。
レッサーヴァンパイアの攻撃は距離が合わず失敗した。
グレイ : 『カーテルの琥珀』！
グレイは杖を掲げた  達成値:20 ([5,4,4]+7)
    レッサーヴァンパイアは抵抗しようとした。
        レッサーヴァンパイアは抵抗に失敗した。  達成値:18 ([5,4,5,3]+1)
    レッサーヴァンパイアは[烈風]になった
レッサーヴァンパイアに8のダメージ　　(([4]+15))/2
Round 2
レッサーヴァンパイアは移動した。
    レッサーヴァンパイアは[4,5]へ移動した。
グレイは移動した。
    グレイは[6,7]へ移動した。
レッサーヴァンパイアの攻撃は距離が合わず失敗した。
グレイ : 『レルアバドの赫』！
グレイは杖を地に突き立てた  達成値:13 ([1,1,4]+7)
    レッサーヴァンパイアは抵抗しようとした。
        レッサーヴァンパイアは抵抗した。  達成値:16 ([3,3,5,4]+1)
    レッサーヴァンパイアに15のダメージ　　([4,3,6,4]+15)
レッサーヴァンパイアに8のダメージ　　(([4]+15))/2
Round 3
レッサーヴァンパイアは移動した。
    レッサーヴァンパイアは[5,6]へ移動した。
グレイは移動した。
    グレイは[7,7]へ移動した。
レッサーヴァンパイアの攻撃は距離が合わず失敗した。
グレイ : 『レルアバドの赫』！
グレイは杖を地に突き立てた  達成値:18 ([4,6,1]+7)
    レッサーヴァンパイアは抵抗しようとした。
        レッサーヴァンパイアは抵抗に失敗した。  達成値:13 ([4,4,3,1]+1)
    レッサーヴァンパイアに30のダメージ　　([1,6,5,5]+15)
        レッサーヴァンパイアは[重傷]になった
        レッサーヴァンパイアは[気絶]になった
        レッサーヴァンパイアは[昏睡]になった
吸血鬼：
　いやだ、なんで……！

吸血鬼は打ちひしがれ膝をつく。
彼女は、自らの体が自らの信仰を否定したことを認識したのだ。
グレイ : シスター、成程な。
吸血鬼：
なんで、神父様、なんで……。
わたし、毎日、祈っていたのに……。
人を、食べたくなど、なかったのに……！
グレイ : 悪いが仕事なんでね。お前には終わって貰う。
吸血鬼：
　冒険者さま。
　どうか、わたしのこと、
グレイ : (杖を構えなおす、突き立てた地より奔る炎、)

報酬袋はいつもより重かった。
吸血鬼は修道女だったなどという醜聞は流されたくないようだった。
グレイ : (「存外、現金なものだな。都会の教会というやつも」)

そんなものがなくとも、冒険者は口を閉じていただろうか？
ともあれ、その金は明け方の憂さ晴らしに消えた。
グレイ : (安酒を一気に飲み下した)
グレイ : 簡単な依頼だったかな