「弟」

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暗く暗く、あたりに夜の海が満ちている。
一体、あなたは何をしていたのだろう。
あなたはどうして、こんな、
真っ黒い闇の中に立っているのであろう。
グレイ : ……

何も、思い出せなかった。

何も。
それは、空中を舞っている蛍のような、
小さな小さな光だった。
どこか懐かしく、どこか寂しくて、どこか嬉しい、
またたくように、いざなうように、
あるいは突き放すように、光るその光は。
『誰か』の姿をしていた。
グレイ : ……、……!
あなたはその姿を知っている。
グレイは何も入力しませんでした。
あなたはその名前を知っている。
グレイ : …、名前、名前……、お前は……
グレイは何も入力しませんでした。
グレイ
「」
名前を呼ぶと、光は、
それを肯定するように、形を変えていく。
その姿が目に入ると同時に、
世界が音を取り戻したようだった。
グレイ : ……
グレイ : (名前は、やはり思い出せなかった。記憶の中の全ての場所から抜き去られたように名前は抜け落ちている)
の声も、あなたに聞こえて来る。
最初は遠く、だんだんとはっきりと、
あなたの覚えているままに、あなたに話しかける。
グレイ : (年若い声だった。思えば随分と長い間、それとは顔を見合わせることなく此処まで来た)

「――――――――――――――。」
奇妙な音を立てて、あなたとの乗っているソレは、
どこかへ向かっているようだ。
いつの間に、二人で出かける事になったのだろうか。
何かの依頼中なのだろうか、そうぼんやりしているあなたを、
が見ている。
グレイ : (顔、顔すらも既にぼんやりとしている。隠した右眼の捉える気配だけがそれの事を確かな存在だと認識させているようだ)

「――――――――――――――。」
あなたに声をかけるその人は、
あまりにもいつも通りで、あまりにも自然だ。
カタン、カタン、カタン―――。
目の前には、一面の星空が広がっている。
この乗り物は、その中を走っているのだ。
グレイ : ……
グレイ : 何だよ。今更。仕来りは守れって言っただろ。
グレイ : …………
グレイ : クソ、ふざけやがって……
あなたは、に話しかける。
グレイが[悪かったよ]を入力しました
グレイ
「悪かったよ」

「――――――――――――――。」
話しかけたその人は、どこまでもいつも通りだ。
あなたの言葉に笑い、頷き、首を傾げ、
あるいは、怒ったりもして、どこまでも自然に、
ただ自然に、あなたの傍に、確かにいる。
グレイ : ……
それが、なぜだか、
とても寂しい事のような気がしたかもしれない。

ともあれ、その人は、今、あなたの目の前にいるのだ。
グレイ : 笑えよ。僕はお前の顔も名前ももう思い出せやしないんだぞ。
この奇妙な乗り物は、どこへ向かっているのだろうか。
外を流れる星空は、どこまでも後ろへ、
はるか彼方へ流れていく。
手を伸ばしても掴めない速度で。

「――――――――――――――。」
窓の外を見ながら、やはりその人は、いつも通りなのだ。
グレイ : (窓の外を見た、幻覚、夢、夢だとしたら嫌な夢だ)
夜が明けていく。
電車の中の人は、どんどん減っていって、
今は、その人と、二人きりだ。
不思議な乗り物は、
そろそろ目的地につくのだろう。
ゆっくり、ゆっくりと、速度を落としていた。

「――――――――――――――。」
ここで降りる、次が目的地だと、そのように、
はあなたに言う。
あなたは
グレイ : ……そうかよ。

「―――――――。」
は、短くそれを肯定する。
奇妙な乗り物は、再び速度をあげていく。
降りたその人は、今までに見た星々と同じように。
手を伸ばしても届かないほどの速度で、
遠く、遠く、彼方へと流れて。

そんなふうに、消えて行った。
あなたが目を開くと、そこはリーンの広場だった。
グレイ : …………
グレイ : む、……
空は青く、陽の光は暖かくあたりを照らしている。
あなたは歩き出した。
冒険者
「ん、よぉ、誰かを探してんのか?」
グレイ : ん、あ、ああ……そんなところだ
冒険者
「……?」
冒険者
「そういえば最近見てないな。」
冒険者
「まぁ、見かけたらお前が探してたって伝えとくよ。」
セシリア
「、さん?」
セシリア
「いいえ、今日は酒場には来てないですね。」
セシリア
「他の冒険者さん達にも聞いておきますね。」
ふらりと、足が伸びる。あの場所へ。
そうだ、は。
は―――。
グレイ : 簡単な依頼だったかな


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『もう一度逢いたい、あの人に』
Master/inuihimeko様