「箱」
Character
グレイ壮年の魔術師。妖精契約に依る古い魔術を使う。
無愛想でそっけない態度をとりがち。
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クエストを開始します。
あなたは呼吸をする。身体を、折りたたむように丸めながら。
視界に移るのは、自身の身体と壁ばかり。
グレイ : ……
別に、望んでこうしているわけではない。
そうしなければ。 いられないのだ。
グレイ : 狭い、な、
――あなたは狭い箱のなかにいた。
……装備も道具も何処にもない。
ただ自分がひとり、詰められている。
グレイ : 杖……は無いな。
何故こんなことになったのか、
思い出そうにも、肝心な所で記憶はぼやけている。
グレイ : 眼も使えないようだな。
グレイ : (右眼を瞬かせるが、特に目に映るものは無い。暗闇だ)
普段通り、過ごしていたはずだ。何も変わらず。
しかし、それだけ。
自分がこんな状況に陥いるまでの経緯が思い出せない。
……どうしようか。
暗闇に慣れてしまった視線を彷徨わせる。
グレイ : (視界をぐるりと巡らせる。特に変化はない)
身体、 壁、
闇、
角、 隅。
見える限り、隙間を探す。
視点を変えようと必死になる。
そして、気づいてしまう。
隙間など何処にも見当たらないことに。
グレイ : 明かりすら無いか。魔術的な空間だろうか。
気づかないふりをしていた息苦しさが、増した気がした。
グレイ : (軽く咳込む、呼吸音がやけに響いた)
酸素はあと、どれだけ持つのだろう。
自身の呼吸の音が、箱のなかで響く。
……把握しようとすることを、やめた。
……どうしようか。
…………。
どれほどの時間が経ったのだろう。
グレイ : 此処でじっとしている場合じゃあないんだがな。
打開策は、見つからない。
行動すればするほど、どうしようもない事だけが、分かってしまう。
このまま居続けることなど、不可能だ。
不可能で、それはすなわち。
グレイ : ……
……この箱のなかで、全てを終えるのだろうか。
ひとりで。
……。
理解
目標値:0 <= 3d+感覚補正
達成値:10([5,1,5]-1)
判定に成功しました
グレイ : 造作も無い
この世界は無情で。先程よりも深く、望まずとも理解をする。
させられる。
この閉ざされた世界に、理不尽に、
詰め込まれた自分に出る手段はないのだと。
グレイ : ハ……道半ばにも程がある。僕を助けてみろよ。妖精共。
……あなたは。
あなたは笑い出す。
グレイ : ハハ……ハハハ……!!
こんな状況が、無性におかしくて。
壁に頭をぶつける。痛みすら、笑えてしまう。
グレイ : ククク……、ハハ……
正気を保つためか、最早それが崩壊したのか。
笑う。笑い続ける。
自分が壊れたのかなんて、確認しようがない。
分かるはずもない。
こんな狭い、暗闇では。
グレイに7のダメージ ([]+25)/3+([]-1)
グレイは9のSPを失った ([]+28)/3
……あなたは。
――箱が開くことはない。
もう、狂う気力もなかった。
身体の力が、抜けていく。
姿勢が変わることは無いけれど。
思考がぼやけていく。
グレイ : (暗闇の中ですら右眼は情報を得ようとあたりを見渡す。もはや無駄だと悟ったばかりだというのに)
何を考えようと意味は無かったけれど。
頭だけが、鈍い痛みを覚え続けて。
グレイ : (頭痛、右眼による過負荷か。あるいは酸欠か)
煩わしかった呼吸の音が、小さくなって。
霞んでいく視界も、暗闇では分からなくて、
ひと
り
で、
:……て………い
:起きてください!!
はっ、と瞼を開いた。
グレイ : っ、
視界に映るのは、何処かの部屋の天井と、
心配を滲ませた顔をする見知らぬ誰か。
グレイ : 誰だ、お前は……
こちらが目覚めたのを見て、安堵の息を吐き出す。
:……ああ、良かった……!
:呼吸は出来ますか?
ゆっくり深呼吸なさってください……
グレイ : ……
グレイ : (大きく息を吸い込み、静かに呼吸を整える)
自分が寝ていたらしいベッドから見える、
開いた窓から入り込む風は涼しい。
あの息苦しさは、もうなかった。
…………、深く呼吸をして、思い出す。
彼は、今回の依頼人だ。
微かに痛む頭の中にある記憶が、鮮明になっていく。
――今回の依頼は、とある森林の奥地まで
護衛を頼みたいという内容だった。
森林の奥に住まう、一匹の妖精を封印する為に。
当然、”ただの”ではない。曰くつきの妖精。
グレイ : (妖精であればよくあることだ。僕の故郷でもそんな奴ばかりだったしな)
元々住み着いていたのか、他所から来たのかは分からない。
最初は子供のような悪戯ばかりだったから、
近くの住民達も妖精の性質として仕方ない事、と放置していたそうだ。
しかしある時期を境に、その妖精は段々と
悪戯では済まないことを仕出かすようになる。
なまじ古参の妖精信仰の気が強かったせいで
住民達はどうすべきか、考えあぐねていたうちに。
とうとう、犠牲者が出てしまった。
森林で採取をしていた、依頼人の親族が”悪戯”のせいで発狂。
拘束を解いて崖から飛び降り、二度と帰ってくることはなく――。
――だからあれはもう、僕が閉じ込めなくてはならないんです。
……そんな話を聞きながら、奥に辿り着き。
グレイ : フン、調子に乗らせるからそうなる。奴らはこちらを玩具程度にしか思っちゃいないよ。
依頼人が一度、その妖精を捕まえてしまえば呆気ないものだった。
これで終わりだ。
――と、思った瞬間。妖精が、飛び出して。
箱型の結界に封印される直前、
妖精が、自分の意識の一部を奪った。
……そして先程の出来事に繋がった、というわけだ。
グレイ : チッ……厄介な手を……
グレイ : (思い出し、苦々し気に)
倒れたあなたは小屋まで運ばれた。
妖精から意識を取り返すために一晩中、
彼は魔術を行使し続けていたらしい。
魔力に疎かったとしても、青白い顔から尽力してくれたことは理解できる。
依頼人:あの妖精は、貴方の意識を使うことで
自らは苦しみから逃れようとしたのでしょう。
依頼人:狭い箱の中に閉じ込められたのは、
自分ではなく、貴方だと認識させて……。
依頼人:……意識の中だけだとしても、
思い込みの力は多大な影響を与えます。
依頼人:……大変苦しい思いをさせてしまったようで。
グレイ : 僕がその程度でくたばる軟な人間だと思われたんじゃ世話無いな。
グレイ : ともあれだ、感謝しておくよ
本当に申し訳ありませんと、深く依頼人は頭を下げる。
その後ろに小さな箱が置かれているのが見えた。
グレイ : その箱は?
……箱の中から、カリカリと引っ掻く音、小さな泣き声が聞こえる。
しばらくして彼は頭を上げ、あなたの視線の先に気づいたのか
振り返り、箱を見て眉を顰めた。
依頼人:……これはもう、箱から二度と
自力では出られないようにしました。
依頼人:……僕は、こいつをあの崖底にでも投げてやろうと思っています。
依頼人:死にも狂いもできないで箱の中で一生、
独りでもがき苦しめばいい。
依頼人:僕の家族をそうしたように。
昏い眼差しで、依頼人は独り言ちるように呟く。
……あなたは、あの箱の中の感覚が少し蘇る様な心地がした。
……。
グレイ : それでいいのか。
依頼人:……何らかの形で償わせるべきという考えもあると思います。
依頼人:ですが妖精に人の常識など通用しない。
本当にただの悪戯だったんでしょう、これにとっては。
グレイ : そりゃあそうだろうな。
依頼人:だからきっと……何も理解しない。
依頼人:……どうしたって許せないんです。僕は。
依頼人:……それでも、貴方がもし仮に。
依頼人:これに手を下したいならばそのように致します。
あるいは、これを、……求めるのならば、お渡しします。
グレイ : ……
依頼人:迷惑をかけてしまった詫びにも、ならないでしょうが。
グレイ : それじゃあ僕にくれよ。妖精とは縁がある。せいぜい有効活用してやるさ。
彼は箱を掌に乗せ、こちらを見つめる。
……どうしようか。
依頼人:……分かりました。
貴方の手に、箱が渡された。
依頼人:……好きにどうぞ。
何らかの道具にしてやるなり、なんなり……。
依頼人:握り潰せば、そのまま終わります。
依頼人:……開けてやるのならば、どうか。
……この付近には戻らない様にしてください。
グレイ : ハ、縛り付けて魔道具にでもしてやるさ。
依頼人:……僕はきっと、貴方の物になったことも構わず、
今度こそそれをどうにかしてしまうでしょうから……。
……あなたは、調子が戻るまでもう暫く休むことにした。
グレイ は全回復しました。
―?帰路を歩くまでの気力は戻った。
そろそろ出てもいいだろう。
予定より重みの増えた報酬を受け取り、
御気をつけて、と依頼人に見送られながら外に出る。
グレイ : じゃあな。
穏やかな風が流れていく。
いつもよりずっと、景色が広く見えた。
一歩、踏み出すことが出来る。
空を、見上げることが出来る。
……それだけで、今日は充分な気がした。
……そういえば。
その箱を取り出した。
泣き声が微かに聞こえる。 ……。
グレイ : お前は当分僕の道具の一つだ。出してはやらないから精々そこで足掻くがいいさ。
……持ち帰った後に、また考えるとしよう。
依頼人が言う以上、今ここで出すべきものでもないだろう。
……戻ろう。
あなたは、ゆっくりと道を歩き始めた。
クエストをクリアしました。
グレイ : 簡単な依頼だったかな
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Master/user 404様